[山芋鉄板]
わたしが最も好きな料理は
「山芋鉄板」だ
山芋の皮を剥いてすりおろしたものに
溶き卵を加えて混ぜ
鉄板焼きにした料理
鰹節や醤油をかけて戴く
これがたいへんに美味なのである
しかし
この「山芋鉄板」と云う料理
真偽の程は定かではないが
九州にしかないらしい
まあ 九州以外のひとはなんて可哀想なのかしら?!
聞いたとき わたしは思わずには居られなかった
「ほんとですよ、あたし、東京で呑み歩いてたとき、居酒屋のメニューには『山芋鉄板』はありませんでしたよ」
と東京に住んだことのある介助者のM・Mさんが云う
あんまり吃驚にしたので
さっそく別の介助者に報告した
「『山芋鉄板』は本州にはないんだって」
「えっ? ぢゃあ、居酒屋とかにあるアレは何なんですか?」
介助者は不審そうに訊いてくる。
「だから、九州の居酒屋にはあるんだよ。でも、本州の居酒屋にはないらしい」
わたしは説明した。
「えっ、だって、本州って九州でしょう?」
介助者の発言にわたしはゲシュタルト崩壊を起こした。
「えっえっ本州と九州は違うでしょ?」
「九州のことを本州って云うんぢゃないんですか?」
介助者の言葉を聞いているうちに
霧が晴れるように わたしには理解できてきた
そうか
この場合の〈本〉は〈本人〉とか〈本朝〉とか云う場合のアレか
だから
「九州=本州」なんだ!
その素直な思考回路に
わたしは感嘆の念を禁じ得なかった
「あのね、日本列島には北海道って島と本州って島と四国って島と九州って島と沖縄って島とがあるの」
「えー、そんなのどこで習いました?」
「え、小学校」
「テストに出ました?」
「出た筈ですよ」
云うと 介助者は衝撃を受けた模様
「うわ〜全然、知らんかったわ。やばくないですか、あたし?」
まあ可愛いから善いんぢゃないかな?
内心だけでひとりごち乍ら
わたしは赤い髪の介助者をチラリ盜み見る
*
そんな紆余曲折を経つつも
わたしは今日も介助者に
大好きな「山芋鉄板」を作って貰う
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