アイスノン
ぬるくなったら
ヌルスノン
もっともっと
ぬるくなって
それこそ熱を孕むくらいになったら
それは
ホットロン
アイスノンは善い
ゼッタイセイギと云う感じがする
まるで
アンパンマンみたく
だって
どんなにヌルスノンになってしまったところで
どこまでホットロンになってしまったところで
冷凍庫にさえ戻してやれば
シヤッキーン
たちまち
お堅いアイスノンとしての自覚を取り戻す
そう云う意味では
アイスノンは偉い
ところで
ハタチのとき
わたしは原因不明の頭痛と熱発で
しばらく入院を余儀なくされた
その病院では看護師さんが
氷枕を持ってきて呉れた
氷枕はわたしにとって新鮮で
――なにしろ生まれてこの方アイスノンしか
使ったことがなかったのだ――
わたしは一気に氷枕が気に入ってしまった
だけど
氷枕は云う間でもなく氷と水だから
わたしの熱でどんどん溶けてしまう
「ぼくたちがきみの熱を下げてあげるからね」
そんな囁きを残しながら
氷枕は心地善いのだけど
そのあまりの自己犠牲の健気な精神に
わたしは罪悪感でいっぱいになってしまう
申し訳なさでいっぱいになってしまう
そう云うところでも
アイスノンは善い
抜かりなくて
ゼッタイセイギだ
2018-07-18
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