わたしは乱歩の初期短編が無性に好きだ!

江戸川乱歩。

江戸川 乱歩(えどがわ らんぽ、男性、1894年(明治27年)10月21日 – 1965年(昭和40年)7月28日)は、大正から昭和期にかけて主に推理小説を得意とした小説家・推理作家である。また、戦後は推理小説専門の評論家としても健筆を揮った。実際に探偵として、岩井三郎探偵事務所(ミリオン資料サービス)に勤務していた経歴を持つ。

云わずと知れた大家である。

この、乱歩の初期短編が傑作揃い!

のちの少年探偵団シリーズなんか、迷走してるとしか思えない。

…いや、面白いけれどさ。



因みに、乱歩の自薦ベスト5は、

『心理試験』、『陰獣』、『押絵と旅する男』、『パノラマ島奇談』、『鏡地獄』

らしい。

『押絵と旅する男』には、改めて納得!




因みに、
新潮文庫版「江戸川乱歩傑作選」には、
二銭銅貨/二癈人/D坂の殺人事件/心理試験/赤い部屋/屋根裏の散歩者/人間椅子/鏡地獄/芋虫
が収録されていて、
手軽で便利でお薦め!



乱歩は同性愛研究でも知られる。
その点からも、わたしは心惹かれてしまう!

わたしの中の腐った部分

わたしの中の同性愛者的な部分

が、

キュイキュイ反応するのだ!

乱歩は少年時代、かなりの美少年だったらしい。
そのころにふたつの同性愛体験を有している。

同級生からラブレターを貰って交際したもの

「年配も背格好も僕くらいで、やっぱり相当な美少年」とのプラトニックなもの

である。

特に後者は、乱歩がのちに、

「実にプラトニックで、熱烈で、僕の一生の恋が、その同性に対してみんな使いつくされてしまったかの観がある」

と語っているくらい、印象深いものだった。

「ちょっと二人の身体がふれ合ってもゾクッと神経にこたえる。手を握り合ったりすれば、熱がして身体が震え出す始末」

わたしはここでも乱歩に共感する。

わたしも
「実にプラトニックで、熱烈で、僕の一生の恋が、その同性に対してみんな使いつくされてしまったかの観がある」
と同じような同性愛体験を有しているのだ。

彼女とわたしは予備校で知り合った。
凄く大人しい彼女はいつも俯いていたけれど、わたしだけは気づいていた。
彼女は大変な美少女だった。

わたしは懸命に彼女に話しかけた。
僅かしか、反応がなくても。
そのうち、彼女も心を開いて呉れるようになった。

だけど、そのうちに、彼女は不安定になって行って、予備校に来なくなってしまった。
あとで聞いたところによれば

このころからわたしへの想いを自覚し、ひと知れず、悩んでいたそうだ。

わたしはそのまま、筑波大学に行き、彼女とは離れ離れになってしまった。
そうして、帰省したおりに彼女と逢ったら、別れ際、彼女は号泣した。

そのころになっては、さすがに鈍いわたしでも彼女のわたしへの想いには気づいてきた。
そして、見ていられなかった。

わたしは彼女を受け容れた。

だけど、わたしは自分の好きについて、懐疑的だった。わたしはたしかに彼女を好きだ。けれど、彼女に恋をしていると云いきれるのか。

彼女は
「わたしはカゲリちゃんを抱くこともためわないよ。」
と云っていたけれど、
わたしはこわかった。
自意識の軛(くびき)が強すぎて、他者に自分を晒すことには抵抗があった。

一年ほど経ったころだろうか、わたしはサークルの先輩から告白された。
同時に迷い出した。
「好きなひとはいる?」と訊かれて。

ひとつには自分はヘテロだと思いたかったのだ。

しかし、彼女はわたしの迷いを赦さなかった。
わたしは彼女を喪(うしな)った。

喪(うしな)ってみて、はじめて、痛感させられた。
自分の中に彼女が占める大きさ。

そして、すぐに後悔したけれど、もう遅かった。

こうやって、わたしは彼女と自分の欠けがえのない恋を喪(うしな)ったのだった。

それからも男女問わず恋びとはできたけれど、誰のことも彼女のようには想えなかった。

後年、乱歩のことばを知ったとき、わたしは深く納得したものだ。

「実にプラトニックで、熱烈で、僕の一生の恋が、その同性に対してみんな使いつくされてしまったかの観がある」

わたしも彼女に一生の恋を使ってしまったのだ。



乱歩のことから話が逸れてしまった!

少年探偵団シリーズは、友人によると、

「迷走でなく、売文。」

なのだそうだ。



最後に、乱歩が同性愛をまっ正面から扱った、『孤島の鬼』を紹介したい。

主人公の蓑浦はまだ30歳にもならない青年であるが、髪は見事な白髪である。彼の体験したある恐ろしい出来事の、そのあまりの恐怖のために黒かった髪が一晩にして真っ白になってしまったのだ。彼の妻の体にはむごたらしい傷跡があり、また恋人と友人を立て続けに亡くした経験を持つが、それも同じ出来事に関連した結果であった。

過去のこと、蓑浦は同僚の初代と恋に落ち結婚を決意する。初代は3歳の時に実の親に捨てられ、育ての親に拾われ大事に育ててもらい、養父亡き今は養母と仲良く暮らしていた。初代が捨てられた時に持たされていた系譜図は肝心なところが破れていて、やはり身元はわからないのだが、初代はお守りがわりのように肌身離さず持ち歩いている。結婚指輪を贈る蓑浦に初代は「私はお返しできるような値打ちのあるものは何も持っていないから、命の次に大事なこれを」と系譜図を贈るのだった。

そんな折、初代に猛烈な求婚を申し込む相手が現れる。家柄も収入も学歴も蓑浦より格段に上のその男は諸戸といい、蓑浦の知り合いだった。蓑浦と諸戸は学生時代に知り合い、蓑浦は尊敬できる先輩といった風に諸戸を慕っていた。諸戸は快活で頭のよい美男子だが実は同性愛者であり、女性に興味がないどころか汚いものだとさえ感じ、またそんな自分を恐ろしくも思い、そして蓑浦に恋情を寄せていた。蓑浦はわずかにそれを悟っていた。酒の勢いで蓑浦に対する恋情を暴露してしまった後は気まずくなり会うことも少なくなったが、いまでも熱烈な手紙をよこす諸戸とつい最近出かけたこともあった。蓑浦に同性愛者の性癖はなかったが、立派な男性として尊敬できる相手である諸戸にそういった感情をむけられることで少しばかり自尊心がくすぐられる向きもあったのだ。蓑浦は諸戸が初代に求婚したのは、初代と自分の仲を引き裂くためではないかと疑う。

ある日自宅で初代が殺され、いつも系譜図を入れていた手提袋などが盗まれる。自宅の鍵はすべてかけられており侵入の痕跡は見当たらない。蓑浦は諸戸を疑わずにはおれず、ひそかに初代の復讐を誓って探偵業を営む友人をたずねるが、彼もまた犯行など不可能と思われるような混雑した海水浴場で白昼堂々殺されてしまう。現場検証を見守る群衆の中に諸戸の姿を発見した蓑浦はいよいよ諸戸に対する疑いを深くするが、その後はこの頃考えていたよりももっと複雑な、おぞましく不幸に呪われた、残酷な「鬼」の所業ともいえる恐ろしい出来事に巻き込まれてゆく…。

主人公は美少年・箕浦くん。
箕浦くんは、年嵩の美青年・諸戸から、同性愛的に愛されている。

「散歩の時に手を引き合ったり、肩を組み合うようなこともあった。それも私は意識してやっていた。時とすると、彼の指先が烈しい情熱をもって私の指をしめつけたりするのだけれど、私は無心を粧って、しかし、やや胸をときめかしながら、彼のなすがままに任せた。」

「諸戸は私の傍に突っ立って、じっと私の顔を見下ろしていたが、ぶっきらぼうに『君は美しい』と言った。その刹那、非常に妙なことを言うようだけれど、私は女性に化して、そこに立っている、酔いのために上気はしていたけれど、それゆえに一層魅力を加えたこの美貌の青年は、私の夫であるという、異様な観念が私の頭をかすめて通り過ぎたのである。諸戸はそこに膝まずいて、だらしなく投げ出された私の右手を捉えていった。『あつい手だね』私も同時に火のような相手の掌を感じた。」

物語は殺人にはじまり、異様な冒険へと繋がって行くわけだけど、それは読んで貰うとして、

乱歩の同性愛に対する想い(異性愛にはない崇高なもの)も垣間見えて、お薦めできる!