あけましておめでとうございます。
今年もミカヅキカゲリプレゼンツ 葉月詩乃の墓並びにミカヅキカゲリをよろしくおねがいいたします!
年賀状には小説を書く予定です。
受け取っていただけると云う方はメールフォームに郵便物が届く宛先を送ってください。
以下は2010年の年賀状小説。
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ジェンダーフリーパニック
ミカヅキカゲリ
 子供は、ジェンダーフリーで育てよう。要の妊娠が判った時、美月夫妻はそう相談した。性別も敢えて聞かないことにした。
 美月と云うのは、元々要の姓だ。田辺なんて平凡だし、美月の方が綺麗だ、と透は美月を名乗ることにした。
 「美月透なんて、俺、美青年っぽくね?」
 と云うのが、透の云い分だ。
 二人はとりあえず、ベビー用品店に行ってみた。そこはピンクと水色だらけの世界だった。中に僅かに白と黄色のコ―ナーがある。
 「黄色って、中性的な色なの?」
 「さあ、でも、子供服が黄色ばかりってどうなの? ゴッホの例もあることだし。」
 要は、黄色い家に住んでいた画家を持ち出した。
 結局、相談の末、二人は子供服は白で統一することにした。
 次なる問題は、子供が生まれるころには完成しているはずの新居の子供部屋の壁紙である。美月夫妻は自分たちのジェンダーフリー教育を完璧なものにしたかった。ただ単に色で性差を助長させないだけでは不充分で、例えば、男の子にはレンジャーもの、女の子には魔女っ子ものの玩具を与えると云ったことまで徹底的に排除するつもりだ。
 「壁紙に黄色はないとして白もやっぱり問題だよね。」
 「何か病院みたいで精神衛生上よくなさそう。」
 「だからって、単純に色を反対にするってわけにもいかないよね。」
 勿論よ、透の言葉に要は即答した。以前、NHK教育TVの「おかあさんといっしょ」の体操の歌で「ライオンになりたい女の子 女の子になりたい男の子 いいないいななれたらいいな」と云うのを要は気に入っていたが、それが、画期的なのは男の子になりたい女の子としなかったからだと要は承知していた。また、それが単に男の子になりたい女の子と云うモチーフを逆転させただけだと云うこととそれが問題でもあると云うことも、要には判っていた。
 
 美月夫妻は結局長時間話し合った末、子供部屋の壁紙はピンクと水色のストライプとすることで落ち着いた。しかし、万事がこの調子では、先が思いやられる。夫妻のジェンダーフリー教育は、始まったばかりなのである。