わたしは強くならなくてはいけない。
切磋琢磨の過程での傷なら幾らでも甘んじて受けるけれど、理不尽で一方的な暴力からは自分の身を守らなければならない。
そう云い聞かせ、別れの場に臨んだ。

「誰かに対して怒る時に、自分を痛めつけて食べなくなったり弱ったりするのだけはやめてくれ」と云われた。
そして、最後のご奉仕にごはんを作らせてくれと云う。
仕方ないので、作ってもらうことにした。

出来上がった料理を食べて驚いた。
あきらかにおいしくないのだ。三年くらいその手料理を食べ続けてきて、こんなことは初めてだった。普段はそれくらい料理上手な人なのだ。
いったいどうしたというのだろう。
わたしの舌がおかしいのか、その人の腕に狂いが生じたのか。
ほんとうに前代未聞にまずかった。かなり驚愕した。
大好きなゴーヤちゃんぷる~はしょっぱいし、お味噌汁は味ないし。

これが泣けるほど美味しかったりしたら散文的なのに。
いや、美味しくないのがよりいっそう散文的なのかも。

とにかくわたしは強くならなくてはいけない。