来ると云う友人を一日待ちながら過ごした。
そのあやふやな眠りと覚醒の繰返しの中で、わたしは一つの別れを決意した。それはけっして楽な決断ではない。
自分を力づけるため、頭の中で文章を綴りつづける。理性で納得させるしかないのだ。
わたしが思い浮かべたのはケリーのことだった。ケリーというのはビバリーヒルズ青春白書のヒロイン的な存在の女性である。綺麗で聡明で、何より自分の芯をしっかり持っている。何が大切で何が譲れないか。それがどんなに辛い決断であってもきちんと選び取ることができる。この人とだったら絶対に幸せになれるという誠実で信頼できる婚約者がいて、安定した結婚が目の前にあったのに、相手の一夜の過ちを知ったときケリーは赦さなかった。見ている側からすれば、一夜の過ぎた過ちくらい赦してもいい気がするくらいだったのに、ケリーは毅然としていた。一回だからとか相手がどんなに自分を愛してくれているかとかそんなことに関係なく、自分の中で確固とした線引きがあるようだった。
わたしもケリーになろう。立ち直るのに時間がかかっても。人を赦さないでいることは辛いことだし、何もなかった振りをしてだらだらと関係を続ける方がずっと容易だ。だけどケリーだったらそうはしないだろう。まだ愛していても縋りたくても、きっちりさよならを告げて、そして振り返らない。ひとりで苦しみ、泣く羽目になっても、それを甘んじて受けとめるだろう。
そう自分に云い聞かせながら過ごした。そう云い聞かせているうちにすっかり夜中になっていた。
結局、待っていた友人は来なかった。
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