運命の卒論発表会当日。
11時55分集合厳守とのこと（その時点での出席に居なければ卒業できませんと云う脅し付き）だったので、11時に起床した。
普段は授業開始時間の8分前まで眠っている（4分で着替え、4分で学校に行く。ほとんど学校に住んでいるような距離にいるからこそできる離れ業である。）人間なので、これでも最大級の決意の現れ。
気合いを入れるために久しぶりに女装をして、コンビニに寄ってブランチを仕入れ、パソコン室に寄って（みなさまのカキコから）元気を仕入れ、いざ会場へ。
会場に入って驚いたこと、それは発表者たちの服装。
みんな一様に灰色のリクルートスーツだったのだ。まるで就職試験みたいに。
対してわたしの本日の女装は、ワインレッドのインナーに茶色のコーデュロイテーラードジャケットと茶系グリーンのプリーツスカート、さらには白のふわふわニット帽（ロングマフラーつき）。どこからどう見ても、少女！という印象でしかなく、あきらかに浮いてしまっている。足元も、みんながストッキング＆黒のパンプスなのに、わたしだけニーソックス＆レトロレザースニーカー。
だって知らなかったんだもん。
不真面目学生なわたしが過去に先輩たちの卒論発表会に勉強に出掛けるような真似をしているはずもなく、そんな服装コードが存在するなんて思いもよらかったのだ。
でも、実際は知っていても結果は変わらなかったと思う。
わたしはあの、リクルートスーツと云うやつが嫌いなのだ。
みんなおんなじに見えて気持ち悪い。灰色の集団。
その仲間入りをしたくなくて就職活動をしなかったようなものなのである。自分に嘘はつけないな、そう思って。
それでもとりあえずジャケットを選んでおいた自分の英断を心の中で称えながら、わたしは席についた。
（その２へ）
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