行く前はものすごく不安で不安で、泣きそうになっていたのだけど、
実際に劇場に入ってみると滞りなく受付嬢をまっとう出来ました。
劇場や演劇空間は、やはりわたしの肌に合っていて、
その中でのびのびと自分にできることを精一杯やれたかんじ。
緊張はしたけど、きびきびしたいい緊張感でした。
わたしは今まで舞台にたつことはあっても、ここまで完璧に裏方に徹したことはなく、
そういった意味でも、役者としていい経験をさせてもらったと思う。

心をこめて、お客さまをお迎えする。
劇場に最初に足を踏み入れたときの空気を決定する重要な役目。
トイレの中まできちんと掃除して、どこも乱れがないようにする。
劇場を完璧に静謐な空間として保つ。
それからお客さまをお迎えする。精一杯のお出迎えをする。
その心構え。

それができる限りやれただけでもわたしは充分に嬉しかった。
劇場にいる間、病気のここととか不安とか、忘れていられた。
元気で、創造的でいられた。
わたしはこの世界で生きていくしかない。
改めて思い定まった。

それだけでも十分だったのに、さらに、最後見せてもらえた舞台が、
技術的には決して高くないのだけど、すごくいい舞台で、
かかわれたことを誇りに思えるようないい舞台で、
なんだか素敵な贈り物をもらったような気分になれた。
その芝居のメッセージは、「幸せになっていけない人なんていない」というもので、
それにとても励まされた。
元気をもらえた。

わたしは大丈夫。やっていける。
久しぶりに、そう思った。

ほんとうにありがとう。
大好きな知り合いの女優さん頼まれて、喜び勇んで引き受けたものの、
実際のところすごく不安だった。
けれど、頑張ってみてよかった。
こんな気持ちになれた。

女優さんは、そこまでのつもりはなかったのかもしれない。
けれど確かに、わたしを救ってくれた。
それから、翠ならきっとやれるよ、と、不安がるわたしの背を押してくれた人たち。
ありがとう。ほんとうにありがとう。
わたしやれたよ。
ちゃんとやれたよ。