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恐怖の強風花火大会②
しかし折からの強風は、そんなゆったりした愉しみを許してはくれなかった。
打ち上げられた花火は、上空で開くまでの間も強い向かい風に煽られるのだろう、なんだか妙に近いのだ。時間差で連発するようなやつは特に、どんどんどんどん迫ってくる。
距離だけではない。強すぎる風は速度にも影響する。
凄い勢いで花火が迫ってくるのだ。
その結果、どう云うことが起こるか。
花火大会にあたりまえに見られるように、大きな花火が打ち上がる上がるたびに観衆から自然と歓声が上がるのだが、それが単純に興奮だけから来るものではないのだ。
そう、花火が怖いのだ。
恐怖による悲鳴に近い叫びと興奮があいまって、もう自分でも愉しいのやら怖いのやらわからない、一種の錯乱状態なのである。
強風花火大会はさらに視覚的迫力による恐怖以上の実際的な危険も内包していた。
それは強風に後押しされ凄い勢いで客席を襲ってくる燃えかす。
わたしはもっと近くでもっと大きな花火を見たこともあるから、降ってくる灰や燃えかすのことは分かっているつもりだった。
事前におねえさんも「燃えかすが落ちてくることかありますので注意してください」と云っていたし。
だけど、それは予想を超えたものだった。
灰とか燃えかすとか、降るとか落ちるとか、そんなレベルではないのだ。
普通ゆっくり降りてくる間に燃えつきて灰になっているはずのものが、強い風のせいで速度を増して降り注いでくる。
まだあかあかと火のついたままで、流星とか隕石みたいに。
本当に凄い早さなのだ。
メテオ・ストライクという言葉が浮かぶ。
あるいは、湾岸戦争の始まりのあの花火のようなパトリオットミサイルの映像が。
とにかく怖い。
襲撃されている気分。恐慌状態。
おねえさんが先程の注意を何度も繰り返すのだけど、こっちはそれどころではない。
「どう注意しろって云うの!?どうせあなたはテントの下か何かにいるんでしょ?ここに来てみなさいよ、そんな悠長なこと云ってられないから!」と、どんどん狂暴な気分になってくる。それくらいに追い詰められる。
花火であんなに怖い思いをしたのは初めてだった。
花火士さんたちの危険と背中合わせの生き様に触れた思いだ。
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