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日本語の難しさ②


ケース2
今日のこと。早めに東京に出て友人と合流して夕食を食べるという前々からの約束があったのだが、わたしのほうに突発的な問題が発生し、出発が大幅に遅れてしまった。
そこで、彼女から予定の調整をするためのメールが来た。
「ごはんどうする? 食べるんだったら、私待つよ?」
もはや半分諦めかけていた食事会だったが、わたしも愉しみにしていたのでお言葉に甘えることにし、さっそく、その旨を返信。

「うん。ごはん食べたし。でもだいじょうぶ?どこかでゆっくりしててね。」

ところが、続いて彼女から来たメールに、わたしは目を疑った。
「えー!! 私、待ってるっていったのに~!!」

青天の霹靂である。
まるで、わたしが、わざわざ待ってくれている優しい彼女を差し置いて、勝手に先に食べてしまったかのような口ぶり(指ぶり)である。

本気で驚き、面食らった。
……ど、ど、ど、ど、どーして????
一体全体、なにがどうして、そんなことになってしまっているのだ???
大慌てで先ほど自分が送ったメールを読み返す。
二度、三度。
そうしてようやく、その謎が解けてきた。

問題は、「ごはん食べたし」にあったのだ。
さらに正確に云うなら、語尾の「~たし」の部分。
わたしは、普段気軽に会話や文章のちょっとしたところに文語体を混ぜてしまう。
この場合の「~たし」は願望を表す文語調なのだ。

ところが、おそらく彼女のよく使う語彙や用法の中に、それはなかったのだろう。
だから、彼女は、普段の自分の言語経験の中から、
この文を「ごはん食べたよ」という完了で解釈したのだ。
わたしが文語調を用いたのとまったく同じ気軽さで、ごく当たり前に。
それぞれの『当たり前』が、たまたま違っていただけ。

特に今回は、友人の反応が素直だったこともあり、すぐに誤解を訂正でき、笑い話になっただけで事なきを得た。
けれど、もしそうぢゃなかったら。
お互いになんとなく厭な気分だけを残してしまうことだって考えうる。
 

日本語って、難しい。
言葉を紡ぐものとして、いつもぶち当たる壁だと思う。

自分にとって、一番まっすぐで正直な言葉。
それから、相手にすとん、と伝わるためにまっすぐで正直な言葉。
それが必ずしも一致するとは限らないのだ。

でも、そのジレンマと向き合いつづける。
それもまた、言葉を紡ぐものとして、逃れられない責任だと思う。
 
 

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