ものすごい期待に胸を膨らませながら、洗濯槽のクリーニングを行った。
だって、テレビとか洗剤のパッケージとかで思わずうわ~、と目を背けたくなるほどにおぞましい、汚れやカビが浮いてくる図を目にしていたから。
それが綺麗になったらどんなに気持ちいいだろう。
一掃の快感、というやつ。
たとえば、溜めに溜めたゴミを一気に捨てるとか、溜まった洗濯物を一気に片づけるとか、伸ばした髪をいきなりバッサリ切るとか、溜まった日記を一週間分くらい一気に書き上げるとか、そういった類の。
わたしはこの種の快楽にけっこう弱い。
そんなわけで、わたしはこの作業をここのところ、とても愉しみにしていたのだ。
いったい、普段それなりに綺麗に見えている裏から、どんなおぞましい光景が出現するか。
汚いことは好きではないのに、自分の手の触れないところでは興味半分の怖いもの見たさでわくわくなんてしてしまう。
人間のこの悪趣味。
終わったらすぐにピカピカになった洗濯機を使いたくなるに違いない。
そう思ったから、晴れの日も待った。
夜が明けた。快晴。
いざ、決行!
洗剤を入れ、溶かし、汚れに馴染むのを待つこと一時間。
それから普通の全自動工程。
…わくわくわくわく。
いったいどんなものが出てくるのか。
怖いけれど見たい。見たい見たい見たい!
期待に胸を踊らせながら、そうっと蓋を開ける。
高まる緊張感。期待。いやがうえにもテンションは上る。
けれど、あんまりと云えばあんまりなことに、水は見事に綺麗なまま。
あれだけ期待させておいて、酷すぎる!
綺麗だったことにがっかりするなんて自分でもどうかと思うけど、人間心理なんてこんなものである。
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