奥村さんとエイプリルフールの計画を立てた。林原を騙す作戰。何がいいか二人で相談して、決まったこと。
奥村さんが、ふぶき荘の系列の施設に異動になった。
奥村さんは何にも言はずわたしが林原に話す。
ちょうどお風呂だったので、わたしは早速作戰を敢行する。洗い場にゐる奥村さんから離れた脱衣場で林原に囁く。
「あのね、奥村さんが○○に異動になつたらしいの。」
「うそー?」
「うん。だけどね、あんまり話してくれないから林原から後で聞いてみて。」
「誰から訊いたん?」
「奥村さんから。でも、あんまり敎へてくれない。」
「言つたらいけんのかもしれんね。ショックー。でも、今頃異動とかあるかな。あ、新しい人が多いけん、ちよつと仕事を覚えるまで殘るんかもね。」
林原は、ショックを受けながら一人でいろいろ言つている。わたしは噴出しそうになるのを堪へて懸命に神妙な顏を作った。
洗い場に行くと奥村さんが訊いてくる。
「作戰決行した。何て?」
「ショックって。」
「はは、単純。」
紫曽田さんに言つたらこういう。
「林原さんが単純じゃなかったら何なの。」
酷い言いぐさである。だが、林原はすっかり信じてしまつている模樣。
林原はパートなので早く帰る。そこで、帰る前にばらそうとした。
「林原ー、四月ばかだね。」
だが、林原ーには一向に通じない。
「四月なのは確かだけどわたしはばかじゃない。」
それを繰り返しながら帰って行つてしまつた。四月ばかだ。
新年度から、林原ーは可愛い。