頼まれて歌をうたうことになった。
イラク派兵反対のピースウォークのオープニングアクト。
曲は「世界に一つだけの花」。
担当者が偶然、わたしのマリア(サウンド・オブ・ミュージック)を観てくれたのだそうで、綺麗な声だったから、ということで声がかかったのだ。
そういうのは単純にうれしいので、唐突な話だったけれどお受けする。
頼まれて踊りに行く人は「踊り子さん」だけど、頼まれて歌いに行く人は何だろう。
「歌い子さん」かなぁ。
いや、踊りは名詞だから、歌も名詞にして、それに子をつける。と。
……歌子?
それぢゃあ人名ぢゃん!!
しかも歌子さんって知り合いのシャンソン歌手さんだよ。
会場まで輸送されながら、そんなことを延々と考えていた。
歌ってから、次の出番までの間、集まった人たちの輪の中に溶け込みながら、やっと答えを見つけた。
わたしは単純に「歌うたい」でいい。
声に乗せて届けるのは、わたしだけのものではなく、いろんな人の想い。
わたしはいわばよりしろ。
みんな、シュプレヒコールを唱えたり、署名活動をしたり、ビラを配ったり、集団でいろんなことをしている。
わたしはその中でたったひとりだけど、でもたったひとりで歌う。
途中、一緒に遊んでいた子どもたちに、「歩かないの? 戦争に反対しないの?」と訊かれた。
わたしはちょっと考えてこう答える。
「もちろん反対だよ。だから歌いに来たの。」
そういう参加の仕方でいいのだと思う。
わたしにはそれがあっているのだと思う。
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