結局、独りで身も世もなく泣きじゃくっていたわたしは、
ある瞬間、ぷつり、と立ち上がった。
もうここにはいられない。
泣きじゃくったままの頭は、その瞬間、けれど、とても冷静になった。
待っているからいけないのだ。
こんなふうに傷付けられてしまうのだ。
どこまでも行こう。
パジャマに近いままの格好で、
お守りのように持っていた携帯を手放し、
疲れて眠っている母を起こさないように注意ぶかく鍵をかけ、
わたしは夜中の闇に歩き出した。
呆けたように、けれども変に冷静な頭で、
わたしはずんずん歩いていった。
最初は泣きじゃくっていたが、だんだん涙が止まってきた。
もうどうなってもいい、帰るつもりも無い、そんな自分と、
そんな自分を客観的に見ている、奇妙に冷静な自分。
バラバラになった二人のわたしは、寒さに凍えた。
ずんずん行って、寒さをしのぐためにコンビニに入った。
目に付く雑誌を手当たり次第に読んでいく。
妙に冷静なわたしが、体が温まるまでそうやりなさい、と司令したのだ。
10分くらいたったころだろうか。
母がコンビニにやってきた。気が付くとわたしがいないので、
慌てていろいろ探し回ったらしい。
そうしてわたしは抱き留められ、うちに戻った。
失敗した、とわたしは思った。
母を巻き込むつもりはなかった、心配させるつもりもなかった。
まさか目が覚めるなんて思いもしなかったのだ。
でも、そういう場合も考えておくべきだった。
それにしても普段のわたしには考えられないことだが、真夜中だったのに誰にも声をかけられず、危ない思いもしなかった。
うちにかえって鏡を覗いて、わたしは得心した。
ひどい顔だったのだ。
泣きはらした目には生気が残ってなく、
涙でかぴかぴに固まった頬は、涙以外の部分でも強張っている。
錯乱した果てのような、狂気を孕んだ顔をしていた。
財布一つ持たず、わたしは何処に行きたかったのだろう。
その後、父は慌ててかえってきたが、その件についての話は一切無く。
わたしはまだ話せる状態ではなかったし、
父はそういう話題を敢えて避けているようだった。
向き合ってくれていると思っていたのは、
わたしの独り善がりだったのかもしれない。そう思った。
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