二時間で帰る。
確かにそう云ったはず。
二時間かあ、でも待ってる。
二時間はなかなか経たない。
もうとうに二時間が過ぎてしまったように感じられても
二時間が経ってくれない。
まだ帰ってこないから。
でも、
二時間で帰る。
確かにそう云ったはず。
だから待ってる。
待ってるのに、ちっとも経たない二時間。
とうとう待ちきれなくて電話をした。
「まだ二時間経たない?」
「経ってるよ、とっくに。」
嘘だ。
二時間経ったわけがない。
ぢゃあなんで帰ってこないの?
とっくに経ったという二時間なのに。
とにかく二時間経ったら
そう思って耐えてきた支え。
二時間。二時間。
そう云い聞かせてきた支え。
そういうものが音も立てずに崩れてゆく。
もう どうしたらいいのだろう。
二時間が経ったのに
どうしてまだ待っているのだろう。
二時間なんてとっくに経っていたのに
それさえ確かめもせずにただただ待っていた。
二時間経てば
二時間さえ過ぎれば
もう帰ってくるのだと
そう信じきって。
何も手に付かなくなる。
涙が急に止まらなくなる。
今まで二時間をやり過ごすために
書いていた小説もかけていた音楽も
途端に無力になる。
二時間は過ぎた、それもとっくに。
なのにわたしだけはまだ二時間の籠の中に囚われている。
身動きすらできない。
待つことをやめることさえできない。
泣きじゃくりながら、永遠に続くわたしの二時間を
わたしはやり過ごさなければならない。
なんの道具も武器も持たないままで。
いつ果てるともない、たったの二時間。
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