バスに乗る度に気になっていること。
わたしの地元のバスは、ICカードを導入していて、タッチ&ゴー!ができるのだけど、
そのカードリーダーが、みえないだれかを感知しつづけているのだ。
人の気配を感知すると、「カードを当ててください」というこの機械、
すべての乗客は乗り終えて誰もいなくなったところで、必ず一回
「カードを当ててください」というのだ。
誰にともなく。どのバス停でも。

怖い、相当に怖い。
あなたにはいったいなんの存在が見えているの?
落ち着き払った顔のカードリーダーの様子からして、そんなに怖い存在ではないらしい。
けれど。
毎回毎回、バス停の一番後ろから、姿の見えない誰かが乗ってきているのだ。
これが怖く無いなんてことがあろうか?!

ちょうど人が少なくなってきたところで、わたしはひざの上に置いていた荷物を脇の椅子に置く。
その途端、カットソーの脇腹部分がツイツイと引っ張られた。
まずい、見えない誰かが座っていたらしい。
「ちょっと、わたしの上に変なもの乗っけないでよ!」
そんな抗議の声が聞こえた気がする。
ごめんなさい、ごめんなさい。
怖くて慌てながら、わたしは荷物をひざの上に戻す。

バスが止まる度、大量に乗ってくる「見えない誰か」。
一応、ICカードで運賃は支払っているらしい。けっこう偉い。
でも例えばバス停に他の乗客がいなかったら、気付いてもらえなくて素通りされてしまうんだろうな。
そんなことを考えていたら、降りるバス停の二つ前くらいからいつのまにか眠ってしまったらしい。

目が覚めて、慌てて飛び降りたのは見知らぬ土地だった。
荷物の下敷きにしちゃったから?
それともその存在に気付いてしまったから?
とにかくこの仕打ちは酷すぎない?
わたしは多少憤慨しながら、寒さに震えながら、反対側のバス停ヘ向かった。