山手線に今度始まるらしいドラマの広告をみつけた。真っ赤なやつ。
主な登場人物として8つの言葉が書いてあった。
殺人者、逃亡者、被害者、~とかそういうやつ。
それがすっごく気に入った。

そのすべての形容詞をすべて一人で満たしている人物が居たら凄いな、と思って一生懸命考え始めたのだ。こういうことを考え始めると、とにかく夢中になってしまう。

昔、被害者だったのが殺人者になる、とかぢゃダメだ。
とにかく8つすべてを同時に満たしている存在でないと。
そんなことを、ひとしきり内向して考えて、もう一度広告に目を戻した。

……ない!!!
広告が消えたのだ!!

思わず、声を上げてしまう。

「どうしたの?」一緒に居た友人は元より、車両中の人が不審そうにわたしを見る。
けれど、不審なのはわたしぢゃなくて、広告の方なのだ。
わたしは思いっきり動揺してオロオロと広告を探し回り、それでも広告がないことに気が付いて、すっかり怖くなってしまった。

その途端、音楽が鳴り、ドアが締まった。
わたしの動揺をよそに、電車は何事もなかったかのように発車する。
そして、おどろいたことに、その途端、
あの広告も元に戻っていた。


驚愕の余り再び上げそうになる声を押さえたその瞬間、
わたしは唐突に気付く。

広告のステッカーは列車のドアに貼ってあるのだということに。
身の毛もよだつ春のミステリーなんて、全く起こっていなかったことに。
……嗚呼、愕いた。ほんと。